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[本008]木でできた海/ジョナサン・キャロル [小説]

★★★★☆
ジョナサン・キャロル「木でできた海」


木でできた海 (創元推理文庫)

木でできた海 (創元推理文庫)

  • 作者: ジョナサン・キャロル
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2009/04/20
  • メディア: 文庫




ジョナサン・キャロルの新刊。
しかし、高い。普通の文庫の厚さで1100円もする。
でもキャロルだから買わなきゃならない。

キャロルは他のどんな作家とも似ていない、
と思うのは、私だけではないと思うけど、
正直なところ、私は読む本が偏っているので
キャロルのような作風が他にないのかどうかはわからない。

もちろん、キャロルの作品が
どんなジャンルにも属さないというのもあるけど、
そもそも普通だったら
キャロルのような語り口の本は読まない。
キャロルは特別な作家のひとりだと思う理由でもある。

キャロルの作品に出てくる人物はいつも小ぎれいで、
知的で、恵まれた環境にいる。
私が普段好んで読む本とまるで正反対である。
そしてこれまた私の苦手な
不思議で気の利いた言い回しが頻発する。

だから、キャロルの新しい本を読み始めた時は
実はいつもちょっとげんなりするのだ。

でも3ページで忘れてしまう。
気がついたらなんかフワフワ浮いているような
キャロルの世界に入り込んでしまう。
なんでだかわからないけど、すぐに夢中になってしまうのだ。
まあ、「フワフワ」はすぐに溶け出して骨をさらすのだけど、
それこそ望むところである。


さて、この作品は「蜂の巣にキス」「薪の結婚」に続く
クレインズ・ヴュー三部作。




話自体は単独でも問題なく楽しめるけど、
登場人物や舞台が共通しているし、
今回の主人公のフラニーは、
前の二作でも印象的な役割で登場している。
だからもし前作を読んでないなら
できれば先の二作を読むことをオススメする。

実は前2作に出てくるフラニーには魅力を感じなかった。
キャロルは、身だしなみのいいタイプの人々を描く時は
すごく冴えてるけど、
貧乏人やアウトローを描こうとしたら、ちょっと鈍いよな、
といつも思っていたし、フラニーはその典型に思えたから。
でも、今作を読み進める内に、フラニー像が
キャロル得意のシャープな人物造形に近づいていき、
どんどん魅力的になっていった。

クレインズ・ヴュー三部作の中ではダントツで好きです。

ちなみに私的キャロルベストはこの3冊。



「死者の書」は最高傑作だと思う。
あとはやっぱりファンタジー要素少な目の方が好き。






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