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[本011]ヤバい社会学/スディール・ヴェンカテッシュ [ノンフィクション]

★★★★☆
スディール・ヴェンカテッシュ「ヤバい社会学」


ヤバい社会学

ヤバい社会学

  • 作者: スディール・ヴェンカテッシュ
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2009/01/16
  • メディア: 単行本



社会学専攻の学生だった著者が、
黒人街でギャングつるんだ当時を語る本。

なにか面白そうなことでも
膨大な資料や学術用語とともに語られると
途端に頭が真っ白になってしまう。

同居人はこの手の本をよく読む。
興味の向いている大まかな方向は同じなので、
この本面白いよ、と勧めてくれるのだけど
大抵読みはじめて数ページで
《魂がぬけてしまう》。

思考が、エクトプラズムのように脳から抜け出してしまい
読んでも読んでも空っぽの頭蓋骨の中で
単語がカラカラと回り続けるだけ、といった状態だ。
こうなると無理して読むのは時間の無駄というもの。

この本の場合も、「社会学」と銘打ったタイトルに尻込みした。
しかも序文や見返しなどに目を通すと、
どうやら「ヤバイ経済学」という本の姉妹編とのこと。

経済学!社会学ならまだしも経済学!
そんな本と姉妹編なんて、やっぱムリ!

と思ったんだけど、パラパラ覗いてみると
意外と平易な文章で会話文も多く、読みやすそう。
で、読んでみることにした。


著者は現在著名な社会学者であるらしい。
その若き日の社会学に向ける情熱と疑問がこの本には詰まっている。

元来、社会学者が研究の対象と過度に接触するのはタブー。
そういった社会学のあり方に疑問を持った著者は
単身、大学近くの黒人地区に出かけていき、
スラム街「ロバート・テイラー・ホームズ」へと近づいていく。

なんというか、もしかしたら訳のせいもあるかもしれないのだけど、
著者はなんとなく天然っぽい人である。
大学でも「あの界隈に近づかないように!」と通達が出るほどの地域に
ひとりでふらふらと行ってしまう。
そしてたむろしているギャングたちに
クリップボード片手にアンケートを始めるのだ。
もちろん怪しまれて、朝まで監禁されてしまうのだけど、
そこからギャングのリーダー、JTとの付き合いが始まる。

ロバート・テイラー・ホームズの人々は独自の社会を築いている。
警察や救急車を呼ぶ、といった一般社会の恩恵は得られない。
だから、自分たちの身は自分で守らなければならない。
もしくは守ってくれる人について行かなくてはならない。
それが、ギャングだったり、民生委員みたいなものだったりするのだけど、
もちろんギャングだからタダではない。
イメージとしては昔のヤクザ映画のテキ屋稼業に近い。
そういう社会に、クリップボード片手のインド系の若者が
ある意味迎え入れられた。

きっと著者の天然っぽさは、率直で飾らない人柄の現れなんだろう。
著者でなければ、こんな風にコミュニティに入り込むことは
出来なかったんじゃないかと思う。
その潜入・密着の様子がなんともあけすけで、
研究者としてではなく、ひとりの人間として
感じたことや経験したことが描かれているにも関わらず、
行動の動機は常に研究者の立場を忘れてはいない。
社会学と言うより、社会学者の密着ドキュメンタリーのような風合いだ。

最初に書いた「ヤバイ経済学」はかなり有名な本らしい。
「ヤバイ社会学」のタイトルもこちらにちなんで付けられているみたいだし、
一応図書館で予約してみた。

しかし、「〜社会学」も図書館で2〜3ヵ月予約待ちしたけど、
「〜経済学」もやっぱり人気。
もう2ヵ月くらいは待つことになりそうだ。







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